平成27年度【共催】



世界演劇講座は、「次代を担う演劇人」を育成します。

20世紀は戦争と革命の世紀と言われます。未曽有の世界大戦を2度経験し、大量虐殺や核兵器の使用、脱植民地闘争や民族の自立、第三世界の独立といったように、わずか百年で実に様々な歴史を我々は経験してきました。他方で、資本主義の進展と行き詰まり、社会主義、共産主義の革命、冷戦の始まりと終焉を迎え、21世紀に入ると、宗教やテロリズム、地球規模での資源の枯渇や環境の変化など、さらに世界は複雑な対立構造の中に投げ込まれました。こうした歴史に演劇はどう対応したのか。
20世紀演劇はそれまでの演劇への反省から、根源的な読み直しが開始された世紀でもありました。科学の発達による芸術とテクノロジーの新たな組み合わせ、都市や国家の再編、前衛と実験の展開から演劇というジャンルの更新と役割の変化は、もはや後戻りのきかない、不可逆的な歴史を歩み始めたとも言えます。
チェーホフに始まる20世紀演劇は、ブレヒト、アルトー、ベケットという三人の革新的な演劇人を核に推移し、1960年代には世界的な同時性で、肉体=身体による演劇の革命がなされました。1920年代のアヴァンギャルドによる(第一次)演劇革命に続く、ネオ・アヴァンギャルド演劇の革命です。資本主義がいっそう侵攻した1980年代には、情報化社会の到来とともに、演劇の枠組みがゆるやかに解体し、パフォーマティヴな領界侵犯的な表現が生まれました。他方で、アメリカが存在感を増し、オニール、T・ウィリアムズ、A・ミラーなどが活躍し、ブロードウェイを中心にしたミュージカルが席捲して商業主義と結びつき、巨大な産業になったのも20世紀演劇のもう一つの特徴でした。
このように、演劇はつねに変化しつつ生まれ変わり、時代の危機に直面しながら、時代への格闘を継続してきたと考えられます。
そして21世紀に入った今、宗教や戦争といった一触即発な状況が生まれ、われわれ日本人もグローバル化が進んだ国際社会の真っただ中に押し出されつつあります。
演劇や芸術、文化の状況を考えることは、とりも直さず、世界の中の自分たちを考えることです。それが、20/21世紀を扱う今回の主旨です。

講座は、前半は問題提起のレクチャー、後半はビデオなどを見ながら、受講生とのディスカッションを中心に進めていきます。


●講義内容/ 第1回(6月22日):チェーホフとロシア演劇
第2回(7月6日):ブレヒト革命と抒情詩的演劇
第3回(9月14日):アルトーと不可能性の演劇
第4回(10月26日):ベケットと不条理演劇
第5回(12月14日):60年代‐肉体/身体による演劇革命
第6回(1月18日):80年代のラディカリズム
第7回(2月8日):ポストドラマ演劇と未来形の演劇
●講師/

西堂 行人[にしどう・こうじん]
1954年東京生まれ。演劇評論家。近畿大学文芸学部舞台芸術専攻教授。70年代末からアングラ・小劇場運動に随伴しながら批評活動を開始。 80年代後半から海外に出て、演劇祭などを視察し、独自の世界演劇論を構想。 90年より、ハイナー・ミュラーのプロジェクトを組織し、2002年と03年に「ハイナー・ミュラー/ザ・ワールド」を金沢と東京で開催。 また韓国との演劇交流を90年より始め、現在「日韓演劇交流センター」の副会長を務める。 著書に『演劇思想の冒険』『ハイナー・ミュラーと世界演劇』『韓国演劇への旅』『現代演劇の条件』『劇的クロニクル』等。

笠井 友仁[かさい・とものり]
1979年生まれ。宮城県仙台市出身。演出家。エイチエムピー・シアターカンパニー所属。NPO法人大阪現代舞台芸術協会理事長。日本演出者協会会員。
代表作に『ハムレットマシーン』(02年)、『traveler』(05年)、『Politics! Politics! Politics and Political animals!』(10年)などがある。05年に「日本演出者協会若手演出家コンクール優秀賞」受賞。07年に京都芸術センター舞台芸術賞にノミネート。 08年にTheatertreffen(ベルリン演劇祭)のインターナショナルフォーラムに参加。14年にアイホールにて上演した『アラビアの夜』の演出にて「文化庁芸術祭新人賞」を受賞。

●日程/ 平成27年6月22日(月)/7月6日(月)/9月14日(月)/10月26日(月)/12月14日(月)
平成28年1月18日(月)/2月8日(月)
講義時間 19時15分〜21時00分
●プレ講座/ 「世界演劇/思想史論の基礎‐19世紀から20世紀演劇へ」
■平成27年5月28日(木)19時15分〜
■アイホール カルチャールームB(3階)
■受講無料
●会場/ アイホール(伊丹市立演劇ホール) カルチャールームB(3階)
伊丹市伊丹2丁目4番1号
●対象者/ 年齢や演劇経験は問いません。
●定員/ 25名 ※申込順
●受講料/ 7,000円(全7回) ※各回1,500円。ただし、定員に達した場合はありません。
●申込方法/ 電話またはメールにて以下の必要事項をお伝えください。
【必要事項】
1.氏名、2.住所、3.電話番号、4.メールアドレス
●申込先/ 電話:アイホール 072-782-2000(火曜休館)
メール:世界演劇講座 kasai.tomonori@gmail.com
●申込締切/ 5月31日(日) ※必着
●主催/ 世界演劇講座
●共催/ アイホール、近畿大学文芸学部