アイホール・アーカイブス
市立伊丹ミュージアムオープン記念事業
ごまのはえ×いいむろなおき 対談
伊丹市で4月22日(金)にグランドオープンする「市立伊丹ミュージアム」の開館を記念して、東リ いたみホールとアイホールで親子で鑑賞できる2作品を上演します。
東リ いたみホールでは、5月15日(日)に人気の絵本を題材とした新作『がまくんとかえるくんとキミのおはなし』。アイホールでは、5月28日(土)・29日(日)に3度目の登場となる『かえるの? 王子さま』が登場。
今回は、それぞれの作品で作・演出を務めるごまのはえさんと、いいむろなおきさんにお話を伺いました。
■『かえるの? 王子さま』はアイホールで3度目の上演となります。改めてどのような作品か教えてください。
いいむろなおき(以下、いいむろ):『かえるの? 王子さま』は、「かえるの?」とクエスチョンマークが入っています。これは生き物のカエルと「帰るの?」と尋ねるダブルミーニングになっています。お話は、私が演じる王子様が、お家に帰るまでを描くすごく単純なストーリーですが、いろいろなアクシデントや冒険があります。大事なポイントとしては、小道具に日常生活で身近にあるような道具を使ったり、パントマイムも簡単で楽しい要素を詰め込んだりして、「お家でちょっとやってみたいな」って思ってもらえるようなアイディアを盛り込んでいるところです。あと、今はコロナ禍ということもあり、積極的にはできないですが、本来はコール・アンド・レスポンス(客席との掛け合い)がたくさんあって、観客と舞台が一体になるようなライブ感のある舞台です。
ごまのはえ(以下、ごま):昨年、家族で『かえるの?王子さま』を観た時に、子どもたちがすごく楽しんでるのを見て「あーいいな」と思いました。そういえば、客席から声援があがったりしてたと思うんですけど、そのあたり、今回何か対策ってありますか。
いいむろ:初演では、客席に入っていったんですけど、昨年はそれをやめました。代わりに「上演中に手指消毒をしてますよ、皆さんも、もし気になる方は消毒してください!」というお芝居を入れました。一つ笑いにするような形で、日常を忘れたいっていう意味でも楽しく織り込んでいけたらいいかなと思っています。
■劇場に初めて来るお子さんも多いと思うんですけれども反応はいかがでしたか。
いいむろ:公演後に、僕を見かけた男の子から、劇場をでたところで声をかけられたんですよ。「あ、王子さまだ。家に帰れたかな」って。物語が終わってからもずっと続いているような、そんな印象を持ってもらえたのが、すごく嬉しかったですし、やっぱり舞台の上から見てても、子どもたちが熱狂する感じとか、すごく印象に残ってます。
■ごまさんの『がまくんとかえるくんとキミのおはなし』はどんな作品になりそうですか。
ごま:本作は、アーノルド・ローベルという絵本作家の人気シリーズ「がまくんとかえるくん」を舞台化するものになります。これは、市立伊丹ミュージアムの開館記念として、『アーノルド・ローベル展』が行われるので、そのつながりです。前半は音楽の生演奏と共に楽しむ絵本の朗読。後半は絵本にインスパイアを受けたオリジナル劇になります。
いいむろ:演奏はどんな方が来られるんですか。
ごま:宮川彬良さんのアシスタントも務められていた若山祐美さんを音楽に起用し、アンサンブル・ベガのメンバーなど実力派の方に演奏いただきます。
いいむろ:すごく楽しそうですね!
ごま:原作に惹かれて来た方にも、音楽に惹かれて来た方にもどちらにも楽しんでもらって、「がまくんとかえるくん」の良さを引き出すような作品になればなと思っています。
■ごまさんは、今回の作品でこういうことやってみようかなというプランはありますか。
ごま:コロナ前は、客席をつかった舞台作品とか、子どもたちと巡るバックステージツアーのような演出をやっていたので、子どもの目線でどう見えるかというのを確認しながら芝居を創っていました。コロナに入ってからは、子ども向けの公演を演出も含めて担当するのは、はじめてじゃないかな。でも今回は、子どもだけでなく、親子向けというイメージでやってます。「がまくんとかえるくん」の『おてがみ』は教科書にも載っているお話なので、かつて教科書で原作を読んで大人になった人が一人で来てもらっても、子どものころの気持ちを思い出してもらえるような、懐かしんでもらえるような作品になるかなと思います。
■ごまさんにも最近新たにお子さんがお生まれになって、影響を受けそうですか。
ごま:まだここが変わったという実感はないですね。これから何か変わってくるのかなと思いますけど。でも、そういうのが作品に表れたらちょっと恥ずかしくなりますね。ただ、劇作家をやらせてもらってるので、親御さんの気持ちとか、子どもの気持ちとかを、獲得できたらいいなと思っています。
■ごまさんは今回、ご自身のカンパニーのメンバー以外の方も入った座組になっていますね。
ごま:いつも一緒に創っている人たちだけではやらずに、なるべく“初めまして”の方を入れることは、どの公演のキャスティングの時にも意識的にやっています。そうすることでいつも一緒にいる人たちの違う面も出てきますから。
■いいむろさんはパラリンピックの開会式に出演され、幅広い人に対するアプローチに繋がっていくのかなあ、と思ったんですけど。
いいむろ:パラリンピックの開会式に出たことで、やっぱり僕自身も変化はありました。例えば車いすの方なら、この段差越えられるかなとか、ここに入るときどうするのかなとか、この道はちょっと狭いなとか。障害のある方が困るんじゃないかなというのに対して、ちょっと違って見えてきました。あと、僕の公演の時は、ろう者の方がよく来られるんで、その人たちがどういうふうに見るかなあとか。特にマイムは言葉がない世界なんで、それを知ってもらって、楽しんでもらえるといいなっていうことは、強く考えるようになりました。
■今回の公演の稽古で大事にされたいことはありますか。
ごま:あまり頑張りすぎると”時間泥棒”に時間を取られていってしまうので、作る側もしっかり準備して楽しんで作っていきたいです。追い詰められないように、作る過程そのものを心の余裕をもってできるようにやっていかなきゃなーと。そういう風にできたら、作品のテーマともうまく合うような創作になるのかなと思います。どの現場もそうなのかもしれないけど、特にこの作品は、あまり必死に作るのはちょっと違うなと感じます。いいむろさんはもう、稽古に入ってるんですよね。
いいむろ:はい。僕もごまさんと一緒で、テーマ的にやっぱり「楽しい」っていうことがあるので、本当に遊びながらアイディアを膨らませたりとか、あとカエルのパペットが出てくるので、新しい動きをみんなでキャーキャー笑いながら作ってて。楽しい雰囲気がそのまんまお客様と共有できたらいいなあって思います。特に今はコロナ禍でしんどいことが多いじゃないですか。そういう意味で、パッと発散できるような、気持ち的にも広がるような方向で持っていきたいなと考えてます。
■伊丹ミュージアムのオープン記念ということで、伊丹で上演することに関してお聞かせください。
いいむろ:この作品は、伊丹のアイホールで生まれた作品ですし、ここで3度目の上演ができるっていうのは、とてもありがたいことだと思います。伊丹に住んでいるご家族の方や、お子さんたちにも、ちょっと遊びに来る感覚で来てもらえると嬉しいです。
ごま:新ミュージアムができたのは、本当に楽しみだなと思ってます。私は高槻市民ですけど、伊丹には家族でよく来てるんです。昆虫館や空港に飛行機を見に来たりとか。そういう意味ではまた一つ回れるところが増えたというか。そこのオープン記念に関わらせてもらえるのは非常にありがたいですね。
いいむろ:僕も昆虫館は行きますね。
ごま:美術館とかは、いつ行ってもいいし、見に行ったあと、そのまま街を歩いてみたりできるのはいいなと思いますよね。今回それぞれの作品の時にちょっと早く来て、ミュージアムで作品を見てから芝居を見たりというような繋がりもできるかなと思うので、伊丹を楽しんでもらえる人が増えるといいなと思ってます。
いいむろ:そうですね。伊丹って楽しい施設がすごく多いところなので、そんなに遠くに行けない世の中だからこそ身近な場所で楽しんでもらえたらいいんじゃないでしょうか。
(2022年4月 東リ いたみホールにて)
市立伊丹ミュージアム連携企画
『がまくんとかえるくんとキミのおはなし』
会場:東リ いたみホール 大ホール
2022年5月15日(日) 15:00 公演詳細
「みんなの劇場」こどもプログラム
市立伊丹ミュージアムオープン記念
『かえるの? 王子さま』
2022年5月28日(土)~29(日) 各日11:00/15:00 公演詳細