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本若
第十弐回本公演
『龍栖に咲く~霧ケ城恋歌~』

平成29年6月30日(金)~7月3日(月)

平成29年
6月30日(金) 19:30
7月1日(土) 13:00/17:30★
7月2日(日) 12:30/17:00★
7月3日(月) 15:30

※★の回はアフターイベントを開催。
※受付開始/開演の45分前。開場/開演の30分前。

 

チケット/
一般:前売3,200円(当日3,500円)
U-22(22歳以下):前売・当日共2,800円(要証明書)
小学生以下:前売・当日共1,500円
【日時指定・全席自由】

★期間限定!早期購入特典あり★
早割りチケット:2,500円(代金振込)
※早割取扱期間:5月1日(月)~20日(土)23:59まで。

平成29年度公共ホール演劇ネットワーク事業『とおのもののけやしき』
岩崎正裕×出演者インタビュー


 

 

 

アイホールでは、2017年7月22日(土)~23日(日)に平成29年度公共ホール演劇ネットワーク事業『とおのもののけやしき』を上演します。

2年ぶりの再演に先駆け、作・演出のアイホールディレクター・岩崎正裕と出演者のみなさんに、本作のみどころや公演への意気込みを聞きました。


■2年ぶりの再演

岩崎正裕

岩崎:「子どものための怪談話をつくろう」というところから、2年前にアイホールの自主製作事業として『とおのもののけやしき』を創りました。初演は伊丹のみでしたが、1ヵ所だけの上演で終わらせるのは惜しいし、せっかくアイホールで製作した作品なのだから、全国へ回したいということになり、この度、再演が実現しました。

宮川:再演できるのはやっぱりうれしいですよね。小劇場の公演は1回きりで終わることが多いので。2年越しで、また同じメンバーで、しかも7都市で上演できるというのは・・・本当に役者冥利に尽きるなと思います。

三田村:僕はこの作品で初めて子ども向けの作品をやらせていただいて、ワークショップも参加させていただいて、子どもがより好きになりました。

藤本:2年経ってもこうやってまだ子ども役をできるってなると、40代、50代になってもこの役をまたやりたいなって気持ちになりますね。

藤本陽子

三田村:基本、僕は芝居も日常もダルい感じなんですけど(笑)、この作品では子どもの軽快さを意識してやりたいなぁと思います。

岩崎:ワークショップでもそうだったけど、子どもたちはずっと動き回っているよね。あれは新鮮だね。

宮川:“もののけ”担当としましては、前回もいろんなキャラクターを試したりしてたんですけど、今回もまたちょっとずつ「こんな感じもできるな」っていうのを試していけたらなって思っています。

 

■キャスティングについて

岩崎:この作品には、いくつかの“もののけ”が実体化して出てくるんですけれども、「役をいくつもとっかえひっかえできる俳優は、やっぱり宮川サキじゃないか」ということで、最初に声をかけたことを思い出しますね。

宮川:一人芝居でいろんなキャラクターを演じてきましたけど、もののけは初めてでしたね。見ていただいたらわかると思いますが、早替えが本当に大変で・・・顔の色も変えるわ、十二単(じゅうにひとえ)で舞台裏を匍匐前進するわ(笑)。舞台の仕掛けもたくさんありますから、スタッフさんも含め、全てにおいて大変な公演です。

2015年8月初演/撮影:井上大志

岩崎:兄妹のキャスティングで「妹タイプの俳優は誰だ?」となった時に、アイホールスタッフ陣の強い勧めで残ったのが、藤本さんだったんです。

藤本:うれしいです! 私個人のことを話すと、講師として子どもたちと関わったり、舞台で共演したり、わりと小さい子どもたちに関わる仕事が多いので、自分が今こうして子ども役として舞台に立っていることに縁を感じています。

岩崎:逆に言うと子どもが身近にいるから、藤本さんは生態観察がよくできているということだよね。兄のキャスティングについては、この作品はそもそも怪談話というところから話が進んでいるから陽気な男には出てほしくないって思ってたんだよね。「関西一陰気な役者は誰か」ということで、三田村さんやなという話になり、出演してもらうことになったんです。

三田村啓示

三田村:陰湿とか卑屈とかよく言われるんです・・・(笑)。

岩崎:蔵の中にふっと立っている時、寂しげなんだよね。そういうのって作って出せるものではないので、おもしろいって感じるんだな。

宮川:子どもの哀愁を背中にしょっている感じですよね(笑)。

岩崎:藤本さんが明るい妹で、三田村さんが陰のあるお兄ちゃん。このコントラストが際立ったので、上手いキャスティングができたなと思っています。

 

■子どもたちの反応

岩崎:初演の時に子どもたちの反応がいろいろあったと思うけど、どうだった?

三田村:正直やっている最中は必死だったんですけど、子どものリアクションを感じながら演じるのはとてもいい経験でしたね。声に出してちゃんとリアクションしてくれるっていうのは嬉しいですね。

藤本:素直です。見たまま、聞いたままを客席で返してくれる。

岩崎:客席でしゃべっているご家族が結構多かったように僕は記憶しているけど。どんなことを言ってたんだろう?

宮川:主人公たちが考えていることを先に言おうとしていた時もありましたし、ドリフターズの「志村、うしろうしろ!」という感じで「あ! あそこにいるいる!」って声がポンっと聞こえてきましたね。もののけの中では子どもたちの一番人気は鬼でしたね。ビジュアルもすごいし、稽古の時は怖がられるだろうなと思っていたけど・・・。本番入ってからの新しい発見でした。

岩崎:子どもたちは気持ち悪いものが好きだからね。

藤本:ああいうイタズラっ子なキャラクターがクラスに一人はいるんじゃないですか?

宮川:けど、登場のシーンはみんな「ひっ!」ってなってましたね。

岩崎:初演時、お芝居が終わってロビーに出てきてから、お母さんが「どう、怖かった?」と子どもに聞くと「全然怖くなかった!」と答える場面を度々見かけましたけど、そういうのがわれわれとしてはとても嬉しいんです。本気で怖がると子どもは二度と劇場には来てくれないので。怖くなかったと言いながら、内心は「ちょっと怖いところもあったな」と思っている嘘つきモードの子どもがかわいくてしょうがないわけです。再演でまた何か子どもたちの新しい反応に出会えたらなと思っていますね。

 

■巡演について

宮川サキ

岩崎:今回は伊丹を皮切りに、鳥取、三重、北九州、長崎、福島、埼玉を巡演することになりますが、みんなはそれぞれの地域に行ったことはあるのかな。

宮川:私と藤本さんは二人芝居で三重と長崎に行ったことがあります。

岩崎:三重の人たちも待ち望んでいるわけだね。

藤本:もうファミリーみたいな感じです。

宮川:久しぶりなので楽しみですね。この間、一人芝居をしに初めて福岡へ行かせてもらったんですが、その時も「北九州での公演楽しみにしています」ってお客さんに言っていただいたので、また違う形で舞台を見てもらえたらと思っています。

三田村:僕も、劇団太陽族のお芝居で岩崎さんと一緒に三重と北九州に行ったことがあります。その他の地域は初めての場所ばかりなので、めっちゃ楽しみです。

岩崎:僕は以前、鳥取で市民参加の舞台に関わらせてもらいました。温泉宿に一ヵ月逗留させていただきました。目の前に湖があったんですが、実はそこが昨年の鳥取県中部地震の震源地だったんですよ。鳥取公演の開催場所である倉吉未来中心はエントランスの壁や天井も落ちて、当時は「夏までにどうなるかわかりません」という返答をいただいていたんです。けれど、奇跡的に修繕作業も終わり、幕を上げていただけることになりました。

  最後に忘れてはならないのが福島と埼玉です。ここにいるメンバーは全員福島に行くのは初めてですよね。長崎が終わってから福島に行くんだけど、土地柄も南と北で違うと思うからお客さんの反応の差が楽しみだね。

藤本:こんな小さい日本なのに、まだ知らない場所がたくさんあって、そこで演劇できるっていうのがすごくうれしいですね。あと、埼玉は東京の人がいちばん観に来やすい場所でもあるので、来てくれるといいなぁと思っています。

宮川:今回、東京のお客さんが何人か伊丹公演にも観に来てくださるみたいです。今や格安の飛行機もあるので、近場で見るも良し、ツアー一発目の伊丹で見るも良しだと思います。

 

■再演に向けて

岩崎:今回のキーワードは「前回をなぞらないで何か新しいことはできないか」ということです。宮川さんは初演の時もいろんなキャラクターでもののけを演じ分けることを試したんだけれど、それはまだ続いてるってことだよね。新たな方法を模索することを止めずに上演に持っていけるのがいちばんいいと思う。

藤本:2年前の時に感じたあの新鮮さはまた感じたいと思っているので、再演ではあるけれども、新作をつくっているような気持ちです。予定調和にならないように、慣れないようにしたいです。兄妹との関係とか、もののけたちとの言葉のやりとりは台本として書かれているものではあるけれど、それが今初めて進んでいるかのように、子どもたちに絵本を読み聞かせるように、やり続けられたらいいなと思っています。

岩崎:今回の再演では舞台の仕掛けが増え、ラストシーンが変わりました。前回は、舞台が盛り上がって最後はしんみりして終わる。そのあと、カーテンコールで役者が出てきてお辞儀するだけっていうのは、「子どもと大人のための演劇」としてちょっと寂しかったので、今回は俳優が歌っちゃいます。

藤本:夏休みが終わったあとの未来に続くような曲ですね。作曲家の橋本剛さんがすごく素晴らしい曲を提供してくださって、難しいけど練習し甲斐があります。

岩崎:練習が終わった後に「こんな歌い方もしたらおもしろいですね」と藤本さんが橋本剛さんにプレゼンをしていて、僕は稽古でそういう俳優を見たのは初めてだったので感動しました。「こんな歌い方で大丈夫ですかね」とかではなく、「子どもっぽく歌ったり、お母さんっぽく歌ったりできるんですよ」みたいなことを言っているところが藤本さんの“歌好き感”を醸し出していたよね。

藤本:いろいろな歌い方を試してみたいと思える、伸び代のある曲だなと思いました。『とおのもののけやしき』にぴったりの曲です。

岩崎:舞台と客席の距離もそれぞれのツアー先によって変わるから、目線なども含め、芝居の変化もいろいろ出てきそうですね。

 

Plant M
「深津演劇祭~深津篤史コレクション舞台編~」
参加作品

『blue film』
—たった1日きりの戯曲公演—

平成30年1月17日(水)

0平成30年
1月17日(水) 18:00
※受付開始/開演の60分前。
※開場/開演の30分前。


Plant Mの『blue film』

深津篤史氏の『blue film』は「被災」をキーワードに描いたファンタジー作品。

主人公かがりは生と死や大人と子どもなど、対の世界を行き交いながら、生きることと向き合ってゆく。

今はもう肉体こそここにはない深津氏と、これからも存在し続ける深津氏の言葉が、作品の向こう側に見えるように取り組むのがPlant M的blue film。

この公演は1月17日、たった一回きりの公演となります。


「深津演劇祭~深津篤史コレクション舞台編~」とは

2014年7月31日、病気のため他界した、劇作家・演出家、深津篤史。

彼の遺した戯曲などを厳選のうえ収録した、作品集「深津篤史コレクションⅠ・Ⅱ・Ⅲ」(2016年7月31日3巻同時刊行予定)の発刊に伴い、「深津演劇祭~深津篤史コレクション舞台編~」を開催。演劇祭では、彼と交流のあった劇団およそ10団体が、作品集の収録戯曲などを中心に、2016年9月からおよそ1年間以上にわたり上演を繰り広げます。


深津 篤史(ふかつ・しげふみ、1967年8月8日-2014年7月31日)
劇作家・演出家。1967年8月8日、兵庫県生まれ。 同志社大学大学院文学研究科新聞学専攻修士課程修了。1992年劇団「桃園会」を旗揚げ。1998年『 うちやまつり』で第42回岸田國士戯曲賞受賞。同年兵庫県芸術奨励賞、第16回咲くやこの花賞受賞。2006年『父帰る/釣堀にて』及び『動員挿話』で 第13回読売演劇大賞優秀演出家賞受賞など。大阪現代舞台芸術協会会長、日本演出者協会理事を歴任。
2009年8月、肺小細胞がんが見つかる。「私を滅ぼすもの」の「名前と実体」があることは「ないよりは良い」と書き記すほど、透徹したまなざしで生と死の虚構とリアリズム、自己と他者の実在と不在を劇作と演出の両面で追求した。
2014年7月31日、5年にわたる闘病生活の末、芦屋市の実家にて死去。享年46。


『凜然グッドバイ』より

Plant Mとは

劇団Ugly duckling解散後、樋口ミユが立ち上げた旅人ユニット。

大阪を拠点にしつつ、日本全国いろんなところでお芝居をする。

表現をたくさん付け足すのではなくて、削いで削いで残ったものが本当に必要なものと考えて出来るだけシンプルに演劇をする。

最小のもので、最大の宇宙を創ることを夢想する。

 


チケット/
▶早割先行販売(11月1日〜11月30日)
2500円
▶一般販売(12月1日発売)
前売 2800円
当日 3000円
高校生以下 前売り当日ともに500円
【日時指定・全席自由】
※未就学児童の観劇はご相談ください。

『祭礼』より
『Aftershock』リーディング公演より

Youth Theatre Japan Presents
“WORLD MUSIC”


平成29年8月17日(木)~8月21日(月)

平成29年
8月17日(木) 18:30
8月18日(金) 18:30
8月19日(土) 18:30
8月20日(日) 11:00/14:00/17:00

追加公演決定!
8月21日(月) 14:00/17:00
※開場/開演の30分前。

 

チケット/
前売3,000円(当日券3,500円)
【全席指定・税込】
※3歳未満で座席を使用しない場合は無料。
※本公演は、全編英語で実施します。日本語字幕を舞台の左右いずれかに投影するため、字幕をご覧になる場合、前方中央の座席からは見づらい場合がございます。

燐光群『くじらと見た夢』

平成29年12月15日(金)~17日(日)

平成29年
12月15日(金) 19:00
12月16日(土) 14:00/19:00
12月17日(日) 14:00

※受付開始/開演の40分前。開場/開演の30分前。


今年で創立35周年記念を迎える燐光群。社会性・実験性の高さと豊かな表現力を兼ね備え、斬新で意欲的な舞台で高い評価を得ています。劇作家・坂手洋二の最新作は、捕鯨に携わる家族たちの「伝承」と「共存」を描く壮大なる叙事詩。

打ち上げられたクジラたちは、夢を見ているのか。
それとも抗いようのない現実に、耐えているのか―。

『くじらの墓標』『南洋くじら部隊』に続き、捕鯨問題と日本社会の現状をリアルに描くこの新作をお見逃しなく。


チケット/
一般前売 3,500円
ペア前売 6,600円
当日 3,800円

U-25(25歳以下)/大学・専門学校生 2,500円
高校生以下 1,500円
【全席指定】
※U-25/学生券は前売のみ・要証明書。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。

少年王者舘『シアンガーデン』インタビュー

 

アイホールでは8月26日(土)~28日(月)に共催公演として、少年王者舘第39回本公演『シアンガーデン』を上演いたします。

今回は、劇団員の虎馬鯨(こばくじら)さんが作を、天野天街さんが演出を担う最新作です。

稽古が始まってすぐのお二人と、劇団員の宮璃アリさんに、お話を伺いました。


■ボロアパートの住人たちを描く

 

虎馬鯨(以下、虎馬):この作品は、2階建てボロアパートの4畳半を舞台に、アパートの住人たちが交錯していく様子を描いた作品です。中心となるのは3部屋の登場人物たち。ひとつめの部屋には還暦前後の独身男性が、二つめの部屋には道端に花の種を植える女が、三つめの部屋はガラクタを拾い集めてロボットをつくろうとしている男がそれぞれ暮らしています。その3人を中心に、総勢6~7人が登場して話が展開していきます。舞台設定はアパート内だけですが、結果的にそこから世界がどんどん広がっていくものになればと思っています。少年王者舘の公演で僕の台本が上演されるのは、『シフォン』(2007年)、『ライトフレア』(2009年)に続き、約8年ぶりです。実は僕、1993年に少年王者舘に入団したあと、並行して自分で劇団をやっていた時期があって、そこで台本を書いていたんです。2013年には劇団の番外イベントでも書かせてもらいました。今回の公演は、劇団の総会で、僕が今作の構想を提案したところ、それが通って、上演の運びとなりました。

宮璃アリ(以下、宮璃):総会では、いつもは天野さんが次の作品の構想をみんなに話すんですけど、今回、コバケイ(虎馬鯨の愛称)さんが、「書きたいものがある」と言ったところ、みんなが「書け! 書け!」と喰いついたんです。

天野天街(以下、天野):そのわりには、出演する人、少ないよね(笑)。

宮璃:それとこれとは別です(笑)、みんな都合があるので。天野さんも6つぐらいの候補を考えていましたよね。

天野:まあでも今回はコバケイが提案したから、僕も候補を出さなきゃと思ったところが大きいんだけどね(笑)。実は、総会で提案する時点では、作品の構想まで練り切れてなくて作品名だけがあることが多い。次、このタイトルでやりたいっていうのがあるだけ。でも、コバケイは、総会の時点で構想もあったよね。

虎馬:実は以前から、いつか芝居のかたちにしてみたいという「何か」は持っていて、ずっとモヤモヤしていたんです。そのころ、職場でプリンターのカートリッジを替えるとき、青色のことをシアンと呼ぶことを知って、面白いなと思って。それで、その「何か」のタイトルを『シアンガーデン』にしようと決めました。僕も内容を決めずに先にタイトルを決めちゃうたちなので、タイトルが芝居の内容を表したものにはなっていないです。あくまできっかけです。あと、漠然と“アパートもの”を書きたいという思いも持っていて、その2案を絡ませて総会でみなさんに提案しました。個人的には、ひとりの人間が一室に閉じこもりながら想像をめぐらす、ものすごく広い世界を描きたいと思っています。

 

 

■「一粒の水」のイメージを取り入れて

 

虎馬鯨さん

虎馬:企画書の「作者より」という箇所には、「雨漏り」「一粒の水」といったイメージの言葉を書きましたが、これはあくまで作品をつくるきっかけのひとつで、それが全てではないです。この「一粒の水」のイメージは、You Tubeにあった3.11東日本大震災のアーカイブ映像を見返していたときに浮かびました。震災の映像は、当時はほとんど見ていなかったのに、何年も経ってからなぜか気になってしまって何とはなしに見ていたんです。そのなかに、町に波が押し寄せくる様子をスマートフォンで撮影した映像がありました。みんなが「危ない。逃げろっ」と逃げ惑っているなか、遠くのほうで年配のおじいさんがトボトボと歩いている様子が映っている。そのあとすぐ、そのおじいさんの後方から波がドバーッて押し寄せてきて…。撮影している人も逃げなきゃいけないですから、結局、おじいさんがどうなったかがわからないままになってしまい…。少し経ってから、カメラがもとの場所を映したときには、そこはもう水で覆われていました。その映像をみたときに、海とか、波とか、町一面の水とか、それってなんだか一つだと感じたんです。遠くから見ると、一粒の水の塊のように見えると思ったんです。そのイメージを、この作品に取り込もうと思いました。ただ、舞台として表現するときは、海や水の話を会話としてするだけで、実際に具体的な「水」を出すつもりはありません。

 

 

■少年王者舘が挑戦する会話劇

 

天野:「虎馬鯨が書く」、それだけで、今までの少年王者舘と全然違うものになると思っています。コバケイが、以前に書いた台本は、長いセリフが多かったんです。セリフでイメージを説明していく感じです。「言葉の力」、それも「まとまった言葉の力」を信頼して書いていたと思うんですけどね。今回、台本を書くにあたり、僕から「セリフは二行以上禁止」とオーダーしました。まあ、その禁止はすでに破られているけど(笑)。ただ、短い台詞のやり取りで構成されている台本にはなっています。

虎馬:今回、今まで劇団に書いてきた作品と書き方を意識的に変えて、会話劇に挑戦しています。実は、2013年の番外イベントで『同級生~咲く汽笛』を書いたとき、初めて、自分の思っていることをその通りに書くことができたと感じたんです。それまでは、自分が思っているようになかなか書けないというジレンマがありました。『同級生』は、机とイスだけでセットも建てず、4人の出演者がただ会話しているという作品ですが、そのとき会話劇という手法が僕にあっていると感じました。それで今回の劇団本公演でも、会話劇の手法を使って書くことにしました。

天野:実は、『シフォン』も『ライトフレア』も、最終的に、僕が構造も含め上演台本として書き直しちゃったという経緯があるんです。でも今回はなるだけしないつもりです。もし、「少年王者舘っぽい」というものがあるとしたら、今回は少年王者舘っぽくない、それを裏切っていく作品になると思っています。あと、作品中に“不可能事”―例えば、人がポッと消える―とかがあるとしたら、今までだと、ザザッーと音楽がなって、前と後ろのシーンが繋がって…みたいに大げさな演出をつけていたけど、今回は、ふっと消えて、ふっと出るみたいに、「すんなり、スマート」に見せていこうと考えています。不思議なことや、手品のようなことも織り込む予定ですが、そういった変なことが次から次へと、“何気なく”起こっていく、そんな舞台にしたいと画策しています。

 

 

■演出プランと舞台美術

 

天野天街さん

天野:演出プランについては、まだ語れるほどの情報はないんですよね。稽古も数日前に始まったばかりで。実は台本も完成していない。まあ、そもそもラストなんて書きながら決まっていくと僕は思うからね(笑)。でも、ラストが無い状態で、美術の構造は先につくらないと間に合わない。だから、いま手元にある情報で舞台美術の田岡さんとアイディアを出し合って、舞台美術は、構造的にはシンプルだけど、ちょっとだけ不思議なことがちゃんと起こせるように用意だけはしておこうと、プランを練っています。

いま構想中なのは、3つの部屋が登場するんだけど、その3つの部屋が重なってひとつになっているような見え方ができないかということです。視点が次々と変わっていく様子をどう構造的に視覚的に見せるか…。例えば、それぞれの部屋をつくって、スライドできる造りにして、出てきたり引っ込んだりすることもできるだろうけど、それはやめようと思っています。台本には、押入れが出てきたり、隣の部屋との関係性も書かれているんだけど、僕は、実際の舞台上に出てくるのは「ひとつの部屋だけ」にしたいと思っています。一部屋の美術で、その部屋ともう一つの部屋と隣の部屋という、異なる3つの部屋を表現したいなと。あと、部屋の出入口もひとつのみにしている。だから、いつもの王者舘だったら、踊りのときには舞台袖や扉などいろんなところから人が出入りするんだけど、今回はそういったことも“不可能事”になってくるんですよね。舞台美術は、もう本当にすっごい単純な壁のみ。客席側に見えない壁があるとして、舞台上には3枚の壁に囲まれた、味も素っ気もないガランとした部屋があるのみ(笑)。そのうえ、出入口もひとつしか作らない。完全に閉じられた空間にしたいと考えています。きっと、すごく閉塞感のある舞台美術になると思います。

 

 

■いつもと違う“質感”で

 

―少年王者舘の特徴でもあるシーンの繰り返しはありますか?

稽古場にて

天野:それはもう、作者の頭の中ですね。

虎馬:僕にとって、最初と最後がくっついているとか、繰り返すっていうのは、当たり前で普通のことという感覚があります。だから結局、今回も“巡る”ものになる気はしています。それが、天野さんの影響かどうかは自分ではわからないですが(笑)。ただ、僕には天野さんみたいな台本は書けない。だからこそ、僕が書けることを書きたいと思っています。

天野:執筆はどこまで進んだ?

虎馬:半分を過ぎて後半に入っています。今は「ブラック」の途中。あと「シアン」のシーンで終わらせたいんですよね。

天野:今回、「イエロー」「マゼンダ」「ブラック」「シアン」など、各シーンを色名で表しているんだよね。上演時間はどのくらいを目指している?

虎馬:『同級生』の感覚だと1枚1分だから、今で60分かな。全体で1時間20分ぐらいにはしたいです。

天野:それなら、コバケイの感覚で2時間ぐらいのもの書いたら、そのぐらいの時間になるかもしれないね。

虎馬:なるほど。

天野:『シフォン』や『ライトフレア』は僕が構成し直したといいましたけど、そのときはコバケイが思った以上に台本を早い時期に完成させてくれていたので、僕も最後まで読んで構成していたんだよね。まあ、僕が書き直すわけだから、結局、上演台本の完成が初日直前になっちゃって、地獄絵図のような役者のバタバタは、変わらなかったんだけど(笑)。

虎馬:僕、『シフォン』も『ライトフレア』も出演していたんですよ(笑)。そう考えると、執筆だけで参加というのは、今回が初めてです。

天野:でも、まだ書きあがってない(笑)。いや、いいよいいよ、まだ時間はある。

宮璃:コバケイさんの作品を上演すると、そのあと、少年王者舘の流れが少し変わる気がしています。『シフォン』のときは、天野さんの当て書きとはまた違う雰囲気の役をする機会になったし。今回も会話が主体の作風ですしね。これを機会に、劇団が次へと展開していくきっかけになるのでは、と思っています。なにかが融合して新しくなっていく感じです。

天野:登場人物6人というのは本公演初の少なさだけど、少人数でいつもと違うことをやってみると、一体何が見えてくるか、楽しみだよね。歌もダンスもあるけど今回の公演は、少年王者舘としては、いいも悪いも含めて初めての試みをいっぱいすることになると思っています。“質感”も含めて、いつもと全然違うことになりそうです。今まで観ていただいているお客様はもちろん、初めて御覧になる方にも、是非、観ていただければ嬉しいです。

2017年7月上旬 名古屋市内にて


少年王者舘 第39回本公演
『シアンガーデン』

平成29年
8月26日(土) 14:00/19:30
8月27日(日) 14:00/19:30
8月28日(月) 14:00


詳細はこちら

清流劇場 2017年10月公演『メアリー・ステュアート』

平成29年10月19日(木)~22日(日)

平成29年
10月19日(木)19:00
10月20日(金)19:00
10月21日(土)15:00
10月22日(日)15:00

※受付開始/開演の60分前。開場/開演の30分前。


近年、さまざまな海外戯曲に取り組んでいる清流劇場。今回は、18世紀に活躍したドイツの劇作家、フリードリヒ・シラーによって書かれた『メアリー・ステュアート』を上演します。

スコットランドの女王メアリー・ステュアートは、夫・ダーンリー王殺害を問われ、従姉妹にあたるイングランド女王エリザベスのもとへと逃れた。ところが、エリザベスよりも正統な王位請求権を持つとされるメアリーは、直ちに幽閉されてしまい・・・。

16世紀の史実を題材に、メアリーが処刑される最期の日々を濃密に描いた悲劇。対照的な人生を歩んだ二人の女性を通して、人間の真実と自由を求める不屈の精神を描きます。


チケット/
一般  4,000円 (当日4,300円)
ペア 7,600円
22歳以下 2,500円
65歳以上 3,800円
※ペア、22歳以下、65歳以上は前売のみ取り扱い。
※小学生以下のお客様はご入場になれません。
【日時指定・自由席】


【出演者変更のお知らせ】
出演を予定しておりました鈴木康平が諸般の事情により、やむなく降板することになりました。代わりまして、オオサワシンヤが出演いたします。

虚空旅団 第28回公演『Voice Training』

平成29年9月22日(金)~24日(日)

平成29年
9月22日(金)19:30
9月23日(土)14:00/18:00
9月24日(日)14:00
※受付開始・整理券配布/開演の40分前。開場/開演の30分前。


第22回OMS戯曲賞大賞を受賞した実力派劇作家・高橋恵の新作。
「話し方教室」に通うワケアリの生徒たち。発語トレーニングで思い切った改善方法を試したところ、予想外の効果があらわれたが・・・。発声機能の考察を通して、現代日本を生きる私たちが「モノを言うこと」や、その中で抱えるコミュニケーションの不自由さやを描きます。


チケット/
一般  3,000円 (当日3,300円)
高校生以下  2,500円(前売・当日とも)
【日時指定・自由席】
※未就学児の入場はご遠慮下さい。

A級MissingLink 第24回公演『罪だったり、罰だったり』

平成29年10月6日(金)~9日(月)

平成29年
10月6日(金)19:30
10月7日(土)14:00/19:00
10月8日(日)11:00/15:00
10月9日(月)15:00

受付開始/開演の40分前
開場/開演の30分前


大阪を拠点に精力的な活動を続けているA級MissingLink。第21回OMS戯曲賞大賞を受賞するなど関西の実力派劇作家として活躍する土橋淳志が、ドストエフスキー『罪と罰』を下敷きに2年ぶりの新作を書き下ろします。


チケット/
一般  3,000円 (当日3,300円)
学生  1,500円(当日1,800円)
ペア  5,000円(前売のみ取り扱い)
【日時指定・自由席】

アイホールがつくる「伊丹の物語プロジェクト」『さよなら家族』
ごまのはえインタビュー

 

アイホールでは、9月8日(金)~10日(日)にアイホールがつくる「伊丹の物語」プロジェクト『さよなら家族』を上演します。作・演出のごまのはえさんに、アイホールディレクターの岩崎正裕がお話を伺いました。


■「伊丹の物語」プロジェクトのこれまで

岩崎正裕(以下、岩崎):この作品は、3年かけて取り組んできたアイホールがつくる「伊丹の物語」プロジェクトの集大成として上演される作品ですね。1年目はどんなところから企画が始まったんでしょうか。

ごまのはえ(以下、ごま):昔の伊丹の写真を集めて、その写真の持ち主からお話をお伺いするところから始めました。ただ何の写真を集めなければいけないのかというところはあまり明確ではありませんでした。なので1年目はそういったことも含め題材をどういう風に集めるかを考えるところから始まりました。

岩崎:家族写真もあれば街の写真もあり。でも旅先で撮られたような写真ではなくて、日常が写された写真じゃなきゃダメだったんだよね。おもしろいものは集まりましたか。

ごま:家族を写した写真はとてもおもしろかったですね。ある家族は、旦那さんが撮影係で、ご本人はあまり写っていません。ですが奥さんや子どもの様子が“旦那さんの視点”からずっと撮り続けられていて、そういう写真にはとても物語を感じました。

岩崎:街の風景を撮った写真で印象に残っていたものはありますか。

1965~75年頃の酒蔵通り

ごま:アイホール前の「酒蔵通り」の写真ですね。JR伊丹駅から関西スーパーやニトリが並んでいる風景は僕もよく知っていたので、写真を見て「昔はこんな風景だったんだ」という発見がありました。有岡城の石垣も草がボーボーに生えていて、現在のスーパーがある所は小さな商店があったようです。駅も昔はとても古めかしく、道幅も狭くて今と全然違いましたね。

岩崎:写真を持ち寄った方からお話を聞くというアイデアは、この企画が発案されたワークショップ研究会でごまさんが考えられたものでしたね。

ごま:昔の話を本で読みながら知るというのもおもしろいんですけれども、実際の写真を見ながらその当時を知っている方にお話を聞くというのも、また違ったおもしろさがあるんじゃないかなと思いました。

岩崎:“茶話会”と称して開催されていましたね。

ごま:お茶とお菓子を用意してお話をしました。いちばんご年配の方で80代、あとは60代の参加が多かったですね。

岩崎:僕の両親もそうですが、昔の話を整理してお話しできる方というのもなかなかいらっしゃらないので、聞くには厖大な時間がかかったと思うんですが。

ごま:そうですね。引越を何回もされている方のお話を伺うと、どれが伊丹にいた頃の話かわからなくなることがありました。お話ししているご本人もわからなくなっていましたし(笑)。

岩崎:そして、1年目で集めた題材を頼りに2年目が始まりました。この年は展示型の公演をイベントホールで行い、ロビーでは写真が展示されていましたね。

ごま:1年目に集めた写真とエピソードをもとに6本の短編作品を創って上演しました。大阪万博の時に171号線を象が歩く話、それから昆陽池の傍で60年以上商店を続けている女性の話などを上演しました。

『イタミ・ノート』写真:堀川高志(kutowans studio)

岩崎:商店の話はよかったね。とくに俳優の髙安美帆さんが、モデルとなった方のエピソードを体温を持って演じられていたのは、普通のお芝居とは違っていておもしろかったな。

ごま:「俳優がしゃべっているのは俳優本人の言葉ではない」という演劇の当たり前をお客さんももちろん了解しているし、了解したうえで、俳優の背後にモデルとなった女性の姿を見ていたんだと思います。

岩崎:俳優が演じている背景に実際の写真も映し出されていて、演劇でありながらそうではないという瀬戸際を舞台に立ち上げたことが、劇場の試みとしておもしろいなと思いました。象の話は圧倒的におもしろいね! 国道171号線を歩いていたから、象の話は伊丹に限らず兵庫県下の他の地域でもよく出てくる話だと聞きました。

 

■3年目の集大成『さよなら家族』

岩崎:そしてプロジェクト最終年となる3年目が、『さよなら家族』の上演となるわけですね。

ごま:1955年から2017年までの年月を叙事的に描いていきます。

岩崎:チェーホフもそうだし、家や家族の歴史は近代以降、演劇がずっと扱ってきたことでもあるよね。

ごま:そうなんです。今回思ったのは、家族が一つの家に住んでいる時間っていうのは案外短いものだなということ。当然、その中で新しい命が生まれることもあれば、さよならしていく人たちもいる。そのはかなさを描いていきたいと思っています。

岩崎:手法としては、ごまさんのいつものタッチになるのかな。

ごま:昨年試みた、写真を使った手法はこの企画の核心だなと感じたので、今回も取り入れます。劇の時間にリアルな写真が差し挟まれる、実際のモデルになった方々の写真が舞台で映し出されるというのは、もしかしたら実験的なのかもしれませんね。

岩崎:昨年の展示型公演を観た時に思ったけど、演劇という“虚構の時間”を見ているはずなのに、現実の場面が写真で投影されると、事実が虚構に創り直されていく間のことをいっぱい想像するんだよね。あれはとてもおもしろい効果だなと思いました。ところで、今回の長編作品のモチーフになったのは、どんなエピソードですか。

ごま:2年目に短編としてもまとめた、商店を営むお母さんの話、国道171号線を歩いた象の話、それから阪神淡路大震災が起きた朝の話を描こうと思っています。

岩崎:1995年の震災は、伊丹でも駅が倒壊したり大変な被害が出ましたね。震災の話も実際の聞き取りの中で多く出てきたエピソードなんですか。

ごま:写真をいちばん数多く提供してくださった方が、戦後から趣味で伊丹の写真をずっと撮られていて、その方が震災の当日と翌日、家や街の様子を撮影されていたんです。舞台では、俳優がその方に成り代わって、写真を撮って歩いた道のりをそのまま演じます。ドキュメンタリーじゃないですが、俳優が写真を撮るしぐさを舞台上で行うと、実際に撮られた震災の写真が舞台に投影されるという演出もあります。

岩崎:それは説得力あるだろうね。僕の妻の実家にも当時の様子を撮った写真が残っているんだけど、子どもたちに震災のことを語る時、話だけでは伝わらなかったことが、実際の写真を見せると現実として伝わるんだよね。 

岩崎:ごまさんは3年間かけてやってきたからある程度の思い入れと距離感が取れるようになってきているでしょうけど、俳優たちの作業はどうですか。

ごま:酒蔵や空港といったわかりやすい“伊丹らしさ”ではなく、どこでもある家族の話にしているので、伊丹から養分を得てつくった作品ではあるけれども、“へその緒”が繋がっているみたいな自覚はたぶんないんじゃないでしょうか。

岩崎:けど、この公演には実際にエピソードを語られた方も観にいらっしゃるんだよね。俳優と対面したらおもしろいだろうな。

ごま:去年も、商店を60年以上営んできた女性の方が出演者の髙安さんと対面されました。しきりに「こんな若い人に演じてもらって恥ずかしいわ」ということをおっしゃっていましたね。僕の推察ですけど、自分が演じられることへの照れや違和感、興味深く感じる心理が働いていたんじゃないかな。

岩崎:俳優と演じられた人が会うのはすごく大切な気がするな。アウシュヴィッツから生還したアンネ・フランクの父親が、アンネの実話を劇にした公演を観に行った時「娘はそこにいなかった」って言っているような証言があるのね。けど、自分たちの記憶は確かにそこにある。エピソードを語った人にとっては、その距離感が演劇というものを理解する機会になる気もする。それが街と繋がることにもなりそうだね。

ごま:モデルの方と俳優が出会うのは、この事業にとっても意義があることですね。

 

■伊丹の時間を生きる

岩崎:街を取材して人と会って、作品をつくるというスタイルはごまさんにとって初めてだったと思うけど、この企画を通して得たことや大切にしていることはありますか。

ごま:僕は時間の流れみたいなものを描くのが好きなんだな、ということがはっきりわかってきましたね。これまで読んできた小説もそういう叙事的なものが多かったですから。

岩崎:厖大な時間の流れは映画や小説で描くことはできますが、演劇でやることは不可能だと言われていますよね。

ごま:今回、作品を書くにあたって、勉強のために鄭義信さんの戯曲をたくさん読みました。ひとつの作品ではわからなくても、作品を並べていくと大河小説のように30年、40年という時間の中で在日韓国・朝鮮の人たちの物語が描かれているように感じましたね。

岩崎:鄭義信さんは当事者性を衝動として作品を描かれていますね。ごまさんはその点、伊丹には縁がなかったわけだけど、作品を執筆することによって伊丹の方と一緒の時間を生きてる感があるんじゃないかな。

ごま:そうですね。今回の作品を書く時も、自分の子ども時代のことを頼りに登場人物たちの気持ちを書いているところはありましたね。

岩崎:作家って作品中に自分がいないと書けないからね。

ごま:そうですね。叙事的に描くからこそ、人物や時代、時代の生活を丁寧に描きたいと思いました。流れていく時間やかわっていく街の景色そして家族。それは寂しいことかもしれませんが、その寂しさごと愛おしいと思ってもらえる作品にしたいです。

 

現代演劇レトロスペクティヴ

AI・HALL+内藤裕敬
『二十世紀の退屈男』

平成30年2月22日(木)~26日(月)

平成30年
2月22日(木) 19:30
2月23日(金)  19:30
2月24日(土)  14:00/18:00
2月25日(日)  14:00
2月26日(月)  14:00

受付開始は開演45分前、開場は開演の20分前。


南河内万歳一座の内藤裕敬がアイホールとタッグを組み、自身の初期代表作を新演出、新キャストで上演!

時代を画した現代演劇作品を、関西を中心に活躍する演劇人によって上演する「現代演劇レトロスペクティヴ」。
今年は、南河内万歳一座の内藤裕敬が、自身の初期代表作『二十世紀の退屈男』を、劇団外では初となる新演出で、オーディションによって選ばれた18人の俳優たちとともに、アイホールで暴れ回る!

 

「こいつ、退屈に魂まで売りやがった!」

『二十世紀の退屈男』は、六畳一間の部屋に暮らす青年の孤独と青春残像を、パワフルでエネルギッシュな肉体の乱舞と、“スーパーセンチメンタリズム”と称えられた、情感豊かな台詞で紡ぐ、南河内万歳一座門外不出の初期作品。1987年初演、92年、04年と再演。『唇に聴いてみる』(1984年)、『嵐を呼ぶ男』(1985年)に続く、「六畳一間」シリーズの第三弾として発表。第36回(1992年)岸田國士戯曲賞候補作。


レトロと企画は名乗っているけど、
どうせなら若手と組みたかった。
それも、猛者と。
オーディションに集まった連中が、果して猛者か?! 
モサッとしてたり、モタモタしたり…。
いいや、俺が猛者に仕上げる!
もう、さっ! 猛者になってもらう!
上手な芝居なんて要らないんだ。
そんなの観たいお客さんなんて居ないんだ。
面白い奴が観たいのよ。
面白い生き物を舞台に。
だけど、下手でいいわけないんだけれど…。
まァ見とけ!
目にもの見せてくれる。
稽古場でも、当日、舞台でも…。

内藤裕敬


チケット【日時指定・整理番号付・自由席】
一般/前売3,500円、当日4,000円
U-25(25歳以下)/前売2,800円、当日3,300円
※U-25のチケットご購入のお客様は当日、証明書をお持ちください。
※開場時の入場順は、前売券→電話予約→当日券となります。
※未就学児童のご入場はご遠慮ください。


内藤裕敬(ないとう・ひろのり)
1959年生まれ。南河内万歳一座・座長。79年大阪芸術大学に入学し、故・秋浜悟史教授に師事。
80年、南河内万歳一座を『蛇姫様』(作・唐十郎)で旗揚げ。以降、全作品の作・演出を手掛ける。
また、様々なキャストにより再演を重ねている即興劇『青木さん家の奥さん』やKARA COMPLEX『調教師』(作:唐十郎、出演:椎名桔平・萩原聖人・黒木メイサ 他)や『すうねるところ』『ハルナガニ』(作:木皿泉、主演:薬師丸ひろこ)、『真田風雲録』(作:福田善之)の演出、『魔術』(出演:中山美穂 他)の作・演出など、劇団外での作・演出も多数。
2000年読売演劇大賞・優秀演出家賞。

 


「現代演劇レトロスペクティヴ」とは

1960年代以降の、時代を画した現代演劇作品を、関西を中心に活躍する演劇人によって上演、再検証する企画。現代演劇の歴史を俯瞰し、時代に左右されない普遍性を見出すとともに、これからの新たな演劇表現の可能性を探る企画です。

過去の現代演劇レトロスペクティヴ

2011年 / 2012年 / 2013年 / 2014年  / 2015年  / 2016年


主催/公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団、伊丹市
企画製作/伊丹市立演劇ホール
制作協力/株式会社オン・ザ・ラン
協力/ISCplayer[s]、イズム、株式会社エーライツ、株式会社スチール・ウッド・ガーデン、劇団月光斜TeamBKC、劇団ハタチ族、コズミックシアター、シバイシマイ、㐧2劇場、ビックワンウエスト、遊気舎(五十音順)

文化庁ロゴH29平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

少年王者舘 第39回本公演
『シアンガーデン』

平成29年8月26日(土)~28日(月)

平成29年
8月26日(土) 14:00/19:30
8月27日(日) 14:00/19:30
8月28日(月) 14:00
※受付開始/開演の60分前。開場/開演の30分前。


映像や音響を駆使してイメージを喚起させる手法、「死から生を見つめる視点」と評される世界観、言葉遊びを多用した脚本、幾何学的なダンスなどを盛り込んだ舞台で根強い人気を誇る、名古屋の実力派劇団「少年王者舘」。

今回は、劇団員で俳優の虎馬鯨が脚本を担当し、天野天街が演出を手掛ける最新作を上演!

「一粒の水」をモチーフに、ぼろアパー トの四畳半一間に暮らすひとりの男の機微を描きます。


*今作品について 作者より

外では雨が降っている。
いつ降り始めたかは定かではない 。
ひょっとしたら五億年ほど前から降っているのかもしれない、と、男は思う。
ぼろアパートの四畳半ー間の部屋に寝転んで、ただ、じっと天井を見つめる男。
彼は、何もかもを失って、何もかもを忘却の彼方へと追いやった。
「俺、まだ生きてるのかなぁ」なんてことを、時々ぼんやり思ったりしている。

ある時、天井板の隙間から、一粒の水が男の頬に落ちる。
雨漏り。
久しぶりの現実的な感触に少なからぬ衝撃を受けた男は、ゆっくりと身を起こし、天井を見上げる。

一ぽたっ。
なんとも言えない間をおいて、再び天井の一点から水が落ち、腐った悦に吸い込まれる。
男は次の一滴を待つ。

一ぽたっ。
天井から畳に視線を移す男。畳には染みができている。
男は次の一滴を手のひらで受けてみようと思い、染みの上に手のひらをかざす。

一ぽたっ。
くすぐったい感触を伴って、手のひらに落ちてきた液体をじっと見つめた男は、「なんかキレイだな」と、久しぶりに声をだす。
そして男は、この「一粒の水」 を、集めてみたい衝動にかられる。

虎馬鯨


チケット
一般 前売・予約3,300円 当日3,800円
学生 前売・予約2,300円 当日2,800円
【日時指定・整理番号付自由席】

※学生前売チケットは少年王者舘チケットフォームのみの取り扱いです。
※前売券は、取扱窓口ごとに整理番号付きとなり、入場順は少年王者舘チケットフォームでご購入のお客様が優先となります。
※ご予約の方は当日ご精算受付順に整理番号を配布いたします。

※開演10分前を過ぎますと、当日券のお客様を優先させていただくことがございます。
※開演5分前までにお越しいただけていない場合はキャンセルされたとみなす場合がありますのでご了承ください。
※未就学児童のご入場はお断りさせていただきます。


【出演者変更のお知らせ】
出演を予定しておりました街乃珠衣が諸般の事情により、やむなく降板することになりました。出演を楽しみにされていた皆様には心よりお詫び申しあげます。
これに伴い、伊丹公演には、がんば(きのこともぐら)が出演いたします。
なお、この度の出演者変更によるチケットの払い戻しなどはございません。あしからず、ご了承ください。


主催:少年王者舘
共催:伊丹市立演劇ホール

マームとジプシー 藤田貴大インタビュー

アイホールでは9月13日(水)・16日(土)~17日(月)に自主企画として、MUM&GYPSY 10th Anniversary Tourを開催します。公演に先駆け、マームとジプシーの藤田貴大さんにお話を伺いました。

■マームとジプシーについて
©井上佐由紀
 マームとジプシーは、2007年、僕が大学4年生のときに立ちあげ、今年で10年目を迎えました。劇団ではなく、基本的には僕一人です。「マームとジプシー」とは、作品を生み出す「僕」という確固たる母体があって、それを「マーム」と考えています。そして、次に、まずは技術スタッフや、衣裳や音楽など、作品を一緒に作りたいと思う作家さんと僕が考えている作品について話しながら具体的にカラーを決めていきます。そして次に、俳優のキャスティングを行い、最後に観客を集めるという順番が重要と思っています。僕(マーム)で始まった作品が、色んな人を放浪すること(ジプシー)を団体の名前にしました。このシステムは僕がいちばんやりたかったことですし、結果、他ジャンルとのコラボレーションがしやすくなりました。劇団のシステムだと、次の公演にこの劇団員を出演させなきゃいけないとか、出演者ありきで作品を考えざるをえないでしょ。このシステムだと、例えば、寺山修司さんの作品をするなら芸人であり小説家の又吉直樹さんに居てほしいとか、歌人の穂村弘さんとご一緒したいとか、そういうところから作品をスタートさせることができた。もちろん10年も続けていると、レギュラーで関わってくれる俳優も出てきていますが、今でも僕は劇団とは思っていません。
 あと、「ジプシー」という名前のとおり、「旅」ということも設立当初から大事に考えてきたことです。そのため、色んな場所に作品を持っていくことも僕の大事な仕事のひとつだと考えています。特に今回、演劇でのツアーの在り方を考えたいと思い、複数の演目を持って各地を回ることにしました。10年のあいだに書いて別々に上演した10個の作品を、「家族・家」「動物・人体」「夜・不在」とそれぞれのモチーフごとに3つずつまとめて、計3作品へと再編集し、そこに『あっこのはなし』を加えて、計4作品をツアーの演目として用意しました。だから10個の作品を持って回るという状態にしました。普通、演劇のツアーは、ひとつの作品で各地を回ることが多いですよね。でも今回、ツアーの新しい形として、「複数の作品を持ってきたので、どれを見るかは、観客のみなさんが選んでください」という枠組みにしたかった。全部の作品を観て欲しいというだけではなく、観客がどの作品を見るかを、主体的に選ぶことを大切にしたかったんです。結果、各地域で2~4演目を上演するという特殊なツアーを組むことができました。伊丹では『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと――――――』と『あっこのはなし』を上演します。

■作品について
©井上佐由紀
 『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと――――――』(以下、ΛΛΛ)は、岸田國士戯曲賞を受賞した『帰りの合図、』『待ってた食卓、』に、『ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。』を加えた3作品を再編集しました。家や実家にまつわる話で、タイトルにある「ΛΛΛ」は、屋根のイメージです。「Λ」が「ラムダ」という記号らしいので、そう呼んでいます。読み方がよく分からない言葉をタイトルにつけたかった。僕は北海道で育ちましたが、群馬の祖母の家で生まれました。その群馬の家が区画整理で取り壊されたエピソードをモチーフにしました。そして、実家を出たあとに久しぶりに帰郷したら、上京する前に家族で囲っていた食卓と何かが違うという感覚ってありますよね。そんな自分の実体験をモチーフにしています。そして、2011年以降、「帰る」という言葉の意味合いが大きく変わったと感じています。震災や自然災害で実際に、帰る場所がなくなってしまった人がいる。家がなくなる、帰る場所がなくなるとは、どういうことなのか、それを区画整理で取り壊された家に重ねながら描いた作品です。
 『あっこのはなし』は、斎藤章子という女優の話をモデルに、30代女性のリアルな悩みを描いた作品です。大学卒業後、彼女が演劇を辞めて地元の新潟に帰り、学校事務の仕事をしながら悶々としていたときの話で、地元に残って結婚してという人生を選ぶこともできたのに、結局一年ほどで東京に戻って、演劇を再開しました。そんな彼女の当時の話を軸に、脱毛とかアカスリとか婦人科系の病気のこととか、そういう話題を織り交ぜて、女子がくちゃくちゃとずっと話しているところを見ているような、そんな作品です。構造としては、『あっこのはなし』のタイトルに読点を入れて、「あっ、このはなし」とか「あつこのは、なし」というように、読点が移動することでプロットを組みました。すごく軽やかな作品で、他の作品とは少し毛色が違います。今回のツアーで上演するのは、『あっこのはなし』以外、全て20代に発表したものを再編集した作品で、それらは自分の10代の頃を思い出しながら描いた「記憶」の話が多い。だから、マームとジプシーはすごくノスタルジックな作風だと思われても仕方がないんだけど、それだけではちょっと嫌だったので、今の30代のトーンとして、この作品は各地で上演したかったんです。

■「選ぶ」にこだわったツアー
 僕が作品をつくるときに常に意識していているのは、18才の頃の自分が興奮するものが作れているかどうかということ。世間的な評価ではなく、「18才の頃の自分の評価」がいちばん重要で、ひとつのラインになっています。僕は、北海道の人口3万人ぐらいの小さな町で10才のときに演劇を始めたので、その町で上演される作品は全て観なくちゃいけないと思っていました。来た劇団のたったひとつの作品を観て、これがその劇団の作風なんだと思っていたんです。それなのに雑誌の紹介で読んだ内容と自分が観たものとが違う…みたいな体験もして、すごく悶々としていました。だからこそ、今回のツアーは、複数の作品を上演して、観客に作品を選んでもらうことと、マームとジプシーの色んな側面を見せたいと思ったんです。
 あと、マームとジプシーの客席は、演劇を観たい人だけが集う場所でなくてもいいと思っています。例えば今回の衣裳は、ファッションブランドを手掛けるスズキタカユキさんなので、ファッションに興味がある、そのブランドが好きだから観にくるでもいいですし、ΛΛΛの音楽は石橋英子さんなので、石橋さんの音楽が好きだから観に来る人が居ても良いわけです。演出家って、ちょっと大げさに「これは演劇作品です」と言えちゃうわけだけど、僕の場合はどちらかというと、お客さんの集め方は「お店」のような感覚でいます。音楽も聴けるし、ファッションも直接観ることができるし、誰かが書いた物語も味わうことができる、そんな「お店」。ただ、この演劇っていうお店は単価が高い。今回なら一人3500円。これを来た人に確実に払わせる、しかも何も買わずに冷やかして帰ることができないという…。だから作品の中身でも、観客が自分の好きなところを選んで観られるよう、俳優だけでなく衣裳や音楽や美術などいろいろ配置することを大事にしています。今回のツアーでは、「演目を選べる」というだけではなく、そんな風に「作品の中で自分が観たい部分が選べる(焦点を合わせられる)」というダブルの「選べる」をツアーとして持っていくことができたら、昔、自分の町に来てくれた劇団とは違う質感を与えることができると思ったんです。
 
■決定版をつくる
 これまでも過去作品の再編集を繰り返して、その時点で発表するためのいちばん良い形にしてきましたが、今回のツアーで、それぞれの作品の決定版を創ったつもりです。今後、どんな場所でやってもいつ発表しても大幅な編集を加えないんじゃないかなと思うぐらい、演劇としての強度があると思っています。どの作家さんもそうだと思うけど、僕も一つの作品で一つのモチーフを満足に語れたということは無くて。もうちょっと入れ込みたかったエピソードをそぎ落としていることが多い。例えば、「家」というモチーフも、これまでいろんな作品で挑戦してきたけど、ひとつの作品だけでは描き切れなかったという悔いが残っています。それで、もっと深く考えたかったことを今の自分たちのスキルやポテンシャルで再編集してみたらどうなるか、と思って取り組みました。オリジナルの単体の作品がいいと言ってくれている人もいらっしゃるので、再編集したことによって、その良さが消えないよう、すごく気を付けています。全く新しくするのではなく、単体のときのニュアンスもちゃんと残るように再編集することを心掛けています。
20代のころは、自分の18才までの時間を描くということに費やしてきました。だけど、30代になって、子どもの頃の時間が遠くなってきた。これから描く新作は、今までとはモードもモチーフも大きく変わってくると思うんです。この10周年のタイミングで、今までの作家としての自分の流れを、一回、ストップさせたかった。
 
■リフレインのこと
©井上佐由紀
 演劇の作品の中で、「繰り返し」のことを「リフレイン」と言い出したのは僕です。最初は「リピート」だと思っていて、物語を読み解くための有効な方法だと認識していたんです。繰り返したり、違う角度で同じシーンを見せることで、観客のなかで整理されたり、全体の編集がうまくいくことがあったので。それで稽古のときに、同じところを執拗にリピートしていたら、ある日、一人の女優が泣き始めて…。そのとき、繰り返しをすることで感情が助長されたんだと勘違いしたんです。本当は僕の稽古がつらくて泣いていたそうなんですけど(笑)。でも、それを見て閃いたんです。映像は一回のテイクで違う角度から撮ることもできるから、再生するとすごく写実的にリピートができる。けど、演劇は生身の人間がやるから、1回目と2回目は違うものになってしまう。そのときに、演劇におけるリピートは不可能だ。つまり僕が扱う「繰り返し」は「リピート」ではなく「リフレイン」なんだと気づきました。
 そもそも演劇自体が、繰り返しの作業ですよね。俳優でいうと、映画や映像は撮影したときが決定版で、僕ら観客は数カ月とか数年前の過去に撮影された俳優の姿を見るわけです。でも演劇は生だし、テキストは過去のものだけど、それを再生しているのは「今」で、僕らは俳優の「今」の姿を見る。だから、映像と舞台の俳優に求められることはそれぞれ違っていて、映像の俳優はこのシーンを何テイクで終わらせるかといった瞬発力が要求されるけど、舞台の俳優には繰り返しの力が求められる。同じことを何度でもやれるのが絶対条件で、それがちゃんとできる人が舞台俳優です。それに、演劇は何回も何回も稽古をする。本番もツアーだと何ステージもやって、それこそ一カ月間とか同じことを繰り返す。その繰り返す行為自体が演劇の醍醐味でもある。稽古場で繰り返し稽古をしてシーンを成立させていく感動もあるし、稽古を何回もすることでやっと自分の書いたものの意味が理解出来たり、公演期間中に出演している俳優の良さがわかったりすることもある。生身の人間だから、繰り返すことで身体に刻み込まれていくものが必ずあって、1回目より3回目のときのほうが俳優の感情の出方が違うということを、観客にも観察してもらいたいと思いました。そういうことができたら、ただ再生ボタンを押してリピートするだけじゃない、演劇にしかできない表現になるんじゃないか。そう思って始めたのが「リフレイン」です。
 
■26歳での受賞から今まで
 26歳で岸田國士戯曲賞を受賞できたことは、何かの免許証みたいなものをいただけた感じでとても感謝しています。けど、実は26歳の段階で評価されてしまったことに結構焦りました。26歳までの自分の言葉はもうみんなは楽しんだんじゃないか、ここまでの君の言葉は評価したから次を見せてよと言われているように感じたんです。そのとき、人生は途方もなく長いと思いました。もっと僕の言葉が熟成してからいただいても良かったんじゃないか、今から考えるとすごく追い込まれていたと思います。
 でも、そのときの僕の勘は良かったと思うのですが、それから、自分の言葉だけで書くのをやめて、受賞の数カ月後から「マームとだれかさん」シリーズとして、漫画家やミュージシャンといった他ジャンルとのコラボレーションを始めました。ここからは自分じゃない言葉と出会おうと。そこからの4年間、野田秀樹さんや寺山修司さん、シェイクスピアの戯曲を演出したり、他ジャンルの人を巻き込んだ作品をつくったり、コラボレーションに費やしました。 “演劇”という表現でやれることを増やそう、そう考え始めると、また楽しくなったんです。コラボレーションを続けていくと、漫画家さんってこういう悩み方をするんだとか、バンドの組織づくりってこうなんだと、他ジャンルの人たちから学ぶことも多かった。それは、僕だけじゃなくて制作面も。自分たちの大切なものを守りながら大きくなっていこうとするにはどうしたらいいんだと考えて、2014年に「マームとジプシー」を会社化したのも、例えばファッションブランドとか音楽バンドの組織づくりから具体的な影響を受けています。
 このコラボレーションは、『蜷の綿』(※注)を書き終えて―この作品は蜷川さんとのコラボレーションと位置付けています―ひと段落したと感じています。自分の作品を成立させるために、今回はこの人の衣裳がいいとか、この人の音楽がいいとか、あえて「コラボレーション」という言葉を使わなくても扱えるようになってきた。外側の人によって内側を変革していくという意識で始めたけど、今やコラボレーションしてきた人たちがどんどん僕の座組の内側に入ってきている。一周回ったと感じています。だから、自分の言葉だけで悶々と考えるんじゃなくて、他ジャンルの良さを吸収しながら自分の言葉を強めていきたい。やっと、自分の言葉に戻ってきている感じがしています。

■伊丹公演に向けて
 Twitterを見ていると3カ月に1回は必ず誰かが「マームとジプシーは関西にきてくれないの?」ってつぶいているんだけど、京都や大阪には実は結構来ているんですよ。でも、伊丹は初めてです。僕は、演劇はいろんなジャンルを巻き込める表現でそれが強みだと思っている。演劇はこういうふうに新しくなっているよというのを伊丹でもお見せしたいと思っています。僕の作品は、表現のスタイルがちょっと現代的なので、とっつきにくい印象があるかもしれませんが、扱っているテーマは「家」とか「家族」とか普遍的なものであるので、楽しんでもらえたらと。
 
※注 
『蜷の綿-Nina‘s Cotton』…2016年、“蜷川幸雄”の物語を藤田貴大が書き下ろし、蜷川本人による演出と藤田演出の二作同時上演予定であったが、蜷川氏の体調不良に伴い公演延期となり現在も未上演。
 
MUM&GYPSY 10th Anniversary Tour 伊丹公演
作・演出/藤田貴大
 
『あっこのはなし』
2017年9月13日(水)19:00 
  『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと――――――』
2017年9月16日(土)15:00・19:00
   9月17日(日)14:00
 
詳細はこちら
 

現代演劇レトロスペクティヴ AI・HALL+内藤裕敬『二十世紀の退屈男』 出演者決定!

 
関西小劇場の雄、南河内万歳一座の内藤裕敬が、現代演劇レトロスペクティヴに満を持して登場。
自身の代表作『二十世紀の退屈男』を、劇団外で初めて上演します。
この作品の製作にあたり、先般、出演者オーディションを開催し、60名以上の応募の中から、今回の出演者が決定しました。
新たなメンバーとともに立ち上げるパワフルな芝居にご期待ください。
  
 
 

■出演者
足達菜野
伊藤晃
井上雅貴
往西遼河
小笠原愛子
香川由依
笠河英雄
是常祐美
こんどうちひろ
西藤将人
笹野美由紀
里谷昌洋
長尾淳史
長尾ジョージ
まえかつと
山本知志
油利春香
和田遥奈
※五十音順
 
■公演概要
現代演劇レトロスペクティヴ
AI・HALL+内藤裕敬『二十世紀の退屈男』
作・演出:内藤裕敬
公演日程:2018年2月22日(木)~26日(月)
公演詳細は追って発表します。
どうぞお楽しみに!

土曜日のワークショップ『昔話でお芝居をつくってみよう』

平成29年8月12日(土)~9月2日(土)

平成29年
8月12日(土)
8月26日(土)
9月2日(土)
各回10:00~12:00 ≪全3回≫


伊丹や近辺地域に昔から伝わる民話を基に、お芝居をつくります。役者の動きに合わせて、セリフやナレーションを入れたり、“カホン”や“クラベス”など様々な民族楽器を用いて、効果音創りにも挑戦します。珍しい楽器に触れながら、個性豊かな舞台人と一緒にお芝居をつくってみませんか。


会場/
アイホール カルチャールームA(2階)

対象/
中学生以上

定員/
15名程度(全回受講者優先、先着順)

受講料/
全回受講:1,500円
※初回時納入。一旦納入した受講料は返金できません。ご了承ください。
1回ずつの単発受講:600円


主催/公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団、伊丹市

平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

MUM&GYPSY
10th Anniversary Tour
『あっこのはなし』
『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、
そこ、きっと──────』

平成29年9月13(水)/16日(土)・17日(日)

『あっこのはなし』(以下Akko)
平成29年 9月13日(水)19:00
※受付開始・当日券販売/開演45分前。
※開場/開演15分前。 
 ◎『あっこのはなし』はご好評につき、前売・ご予約の取り扱いを終了しました。当日券は開演45分前より若干枚数販売予定です。
 
『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、 そこ、きっと──────』(以下ΛΛΛ)
平成29年
9月16日(土)15:00/19:00
9月17日(日)14:00
※受付開始・当日券販売/開演45分前。
※開場/開演30分前。
 ◎9月16日(土)15:00、17日(日)14:00の回は、ご好評につき、前売・ご予約の取り扱いを終了しました。当日券は開演45分前より若干枚数販売予定です。
 

関連企画(地域交流プログラム)

レクチャー&ワークショップ
「日本の現代演劇と、マームとジプシーの10年」

【ワークショップ】
平成29年9月12日(火)18:00~21:00※終了時間は予定 申込終了

【レクチャー】
平成29年9月14日(木)19:45~21:30
台風5号の影響により中止となった8月7日開催の振替分。
 

★詳細はこちら
→『レクチャー&ワークショップ』紹介ページ(https://www.aihall.com/mumgypsy_lecws/)


この旅を終えたあと、ぼくらはなにを想うだろう

2017.4.16 藤田貴大

演劇はもとより、文学、音楽、ファッションなど、さまざまなジャンルから熱い注目を集める「マームとジプシー/藤田貴大」。結成10周年を迎えた節目に、過去の10作品を3作品+1作品につくりかえ、全国6都市を巡演します。
伊丹では、第56回(2012年)岸田國士戯曲賞受賞作を含む『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、そこ、きっと―――――』と、2016年発表の『あっこのはなし』を連続上演。
ご期待ください。

★10周年ツアー公式Twitterはこちら


『ΛΛΛ かえりの合図、まってた食卓、 そこ、きっと──────』

藤田貴大が26歳の若さで、第56回岸田戯曲賞を受賞した『帰りの合図、』『待ってた食卓、』 (2011年)を軸に、藤田の生家である祖母の家が区画整理によってなくなった出来事を描いた『ワタシんち、通過。のち、ダイジェスト。』(2012年)を新たなモチーフに加え、2014年に「家族・家」をテーマに再構築した作品。
 
©TOMOFUMI HASHIMOTO
 

『あっこのはなし』
新宿に新しくできた劇場、LUMINE0のオープニング作品として2016年に発表。マームとジプシーの常連メンバーとともに、コミカルに30代の女性を描いた作品。伊丹では、最小限の照明・音響・映像でシンプルに上演します。

©TOMOFUMI HASHIMOTO

チケット/
ΛΛΛ…一般/前売=3,500円 当日=4,000円
   U-25/前売=2,800円 当日=3,300円
Akko…前売=2,000円 当日=2,500円
【日時指定・整理番号付・自由席】
※U-25は25歳以下対象。当日、入場時に年齢の分かる証明書をご提示ください。
※未就学児の入場はご遠慮ください。
※開場時間よりチケットに記載の番号順にご入場いただきます。

助成/一般財団法人地域創造
企画制作/公益財団法人埼玉県芸術文化振興財団、合同会社マームとジプシー
主催/公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団、伊丹市

文化庁ロゴH29平成29年度文化庁劇場・音楽堂等活性化事業

人形劇団クラルテ
第116回公演
『ハムレット』

平成29年9月29日(金)~10月1日(日)

平成29年度(第72回)文化庁芸術祭参加

平成29年
9月29日(金) 19:00
9月30日(土) 15:00
10月1日(日) 14:00
※受付開始/開演の60分前。
※開場/開演の30分前。

チケット/
大人:3,500円
U-25(25歳以下):2,500円
O-65(65歳以上):3,000円
【全席指定】
※人形劇団クラルテともの会2割引。
※団体(10名様以上)1割引。
※未就学児の入場はご遠慮下さい。
※各種割引の併用はございません。

振り袖講談 vol.2

『lullaby,everybody sleep tight. 〜子守歌、すべてのひとに眠りを〜』

平成29年10月28日(土)~29日(日)

会場:東リ いたみホール(伊丹市立文化会館)

平成29年
10月28日(土) 14:00/17:00
10月29日(日) 14:00
※受付開始・開場は開演の30分前。

会場/
東リ  いたみホール(伊丹市立文化会館)4F大和室

料金/
木戸銭1,500円

※全席自由


劇作家・北村想のプロデュースによる
船戸香里の一人芝居の第二弾。


振り袖着付けた女優「振り袖かを里」の一人語りならぬ講談で、巧みな話芸をお披露目します。


高度で不条理なショートショートの数々をお楽しみください。
ギタリスト佐野栄治による音楽も⾒どころです。