アイホールでは今年度も、共催事業として「次世代応援企画break a leg」を開催いたします。アイホールディレクターの岩崎正裕と、参加いただく「立ツ鳥会議」の植松厚太郎さん、「ばぶれるりぐる」の竹田モモコさんにお話いただきました。
■企画趣旨について
岩崎:「次世代応援企画break a leg」は平成24年度から継続している事業です。アイホールのひとつの柱として、若手支援に注力するという主旨のもと、参加団体を全国公募し、毎年、新しい団体に登場いただいています。今年度もbaghdad caféの泉寛介さんと選考しまして、「立ツ鳥会議」と「ばぶれるりぐる」に登場いただくことになりました。もっと経験の浅い劇団やユニットに登場いただくことも多いのですが、今回は、演劇界においても充分経験を積まれている二団体になりました。 「立ツ鳥会議」は、植松さんが第24回OMS戯曲賞の佳作を受賞された『午前3時59分』の戯曲を読み、構成の面白さと緻密さを評価しました。映像も拝見し演劇的成果も高いと判断しました。今回は新作で登場されます。「ばぶれるりぐる」も戯曲を読み非常に感心しました。シチュエーションと面白い台詞運びで書かれているのですが、現代演劇としてもちゃんと地に足がついている。笑いだけに特化するのではなく、ある地域のコミュニティがとても緻密に書かれているのが興味深かったです。
★立ツ鳥会議『夕夕方暮れる』
■立ツ鳥会議について
植松:立ツ鳥会議は、私、植松厚太郎と小林弘直の二人が共同主宰の演劇ユニットで2010年に結成しました。私が脚本・演出を、小林がプロデュースを担っています。私たちは、東京大学と東京女子大学の学生で構成されている学生劇団「綺畸」の出身で、大学の卒業公演を自分たちでやるためにこのユニットを立ち上げました。「立ツ鳥会議」の名前は、卒業公演らしい名前がいいということから、あえて、跡を濁してやろう、記憶に残してやろうという意味でつけました。卒業後は、私が大阪に移住したりそれぞれの生活もあったりで演劇を続けられない状況でしたが、やっぱりなんとかしてやりたいねとなり、5年後の2015年に再始動し、今年で丸4年を迎えます。現在のメンバーは5人で、30代前後の社会人が中心です。東京のメンバーが多いので、大阪在住の私が週末に東京に通い、稽古をするという非常に強引なかたちで活動しています。作風は現代を舞台にした会話劇です。丁寧に積み重ねた会話と豊かな物語を通じて、現代の実感の奥底にある感情を掬い上げる作品をつくることを目指しています。毎回、トリッキーな演劇的仕掛けを入れているのも特徴です。出演者は公演ごとに、プロの俳優や社会人、学生といったバラエティに富んだ面々をお呼びし、そのなかでいかにクオリティの高い作品をつくるかを模索しています。今回は東京・兵庫の二都市公演で、東京公演は「CoRich舞台芸術まつり!」の最終審査対象に残っており、兵庫公演はアイホールのbreak a leg参加と、立ツ鳥会議としてはいつになくチャレンジングな公演になっています。
AI・HALL共催事業として、今年度も「次世代応援企画break a leg」を開催いたします。 参加する2劇団よりそれぞれ代表のみなさんと、アイホールディレクター岩崎正裕より、本企画および各公演についてお話いただきました。
■企画趣旨について■
岩崎:次世代応援企画break a legは、2012年度から開催しており、今回で7回目になります。昨今の関西では、経済的に厳しい状況にある劇団が多く、カフェ公演やアトリエ公演が流行っています。そうしたなか、アイホールを使用する若手の団体が少ないのが現状です。そこで、若い表現者に門戸を開くために「break a leg」を立ちあげました。近年は名古屋、東京などの関西圏以外の団体の登場も多かったのですが、今年度は久しぶりに関西にルーツを持つ二団体が並びます。今回の応募団体の中で、「少女都市」と「うんなま」は頭一つ抜けている印象がありました。他の団体が駄目だったのではなく、この二劇団の成立度が高く、期待ができると考え、今回、選出しました。
繁澤邦明(以下、繁澤):「うんなま」は、もともと「劇団うんこなまず」という劇団名でして、団体名からすでに社会を拒絶してしまっているところがあったんです(笑)。今までの作品も、作りたいものを作って、共感できる人が共感してくれたらいいやっていうスタンスがどこかありました。いわば、「自分たちのための演劇」ですね。そんな中で、今回、「break a leg」に選んでいただけたのはとても光栄で、この機会に、市立の演劇ホールであるアイホールで、共催公演として何をするかを考えました。演劇作品として面白いものを作ることはもちろん、かつ、実用的で実利的というか、社会にとって意味がある演劇とは何だろうかと考え、観て学べる演劇作品として、今回『ひなんくんれん』という新作を発表します。この作品のテーマは大きく二つあり、一つは「誰かのための演劇」、もう一つが「演劇(うんなま)で防災」です。