過去を透かし、未来を掘る
令和元年度 現代演劇レトロスペクティヴ 開催!
トリコ・A『ここからは遠い国』
作:岩崎正裕 演出:山口茜
2019年12月20日(金)~22日(日)
コンブリ団『紙屋悦子の青春』
作:松田正隆 演出:はしぐちしん
2020年1月17日(金)~19日(日)
■ディレクターズ・ノート
本年度のレトロスペクティヴには1990年代に関西で生まれた二作品が並ぶ。1980年代、サブカルチャーの波は演劇にも押し寄せ、派手やかな上演が注目を集めていた。その潮流に、立ち塞がるように現れたのが「現代口語演劇」を提唱する平田オリザさんである。その頃、平田さんの影響でもなく、関西弁でセリフを書き始めた私がいた。お隣の京都を見れば、松田正隆さんが長崎の言葉で書いていた。バブル期の華やかさに対する反動だったのかも知れない。
松田さんとの出会いは第1回OMS戯曲賞のとき。松田さんの大賞作品『坂の上の家』と、私の『レ・ボリューション』(佳作)が併録され出版された。編集の小堀純さん立ち合いのもと、校正に臨んでいるとき、松田さんは私の台本を覗き込み「黒いね」と言った。紙面の文字量を言ったのである。見れば、松田さんの紙面は白かった。端正なセリフ運びの行間から人物の機微が浮かび上がる仕掛けだ。これぞ文学である。対して私は、これでもかと人物に思いの丈を語らせる。この手法は『ここからは遠い国』でも変わらない。山口茜さんがどのような視点で演出してくれるか楽しみだ。はしぐちしんさんは『紙屋悦子の青春』初演時に俳優として関わっておられた。普遍性のある戯曲故に、その読み込みから現在にどうつなげるのか興味深い。
時を隔てれば、作品に対する観客の捉え方も違うだろう。それが現代演劇レトロスペクティヴの醍醐味であると云える。
アイホール・ディレクター 岩崎正裕
「現代演劇レトロスペクティヴ」
1960年代以降の、時代を画した現代演劇作品を、関西を中心に活躍する演劇人によって上演、再検証する企画。
■演出家対談
山口茜(トリコ・A)×はしぐちしん(コンブリ団)
進行:岩崎正裕(アイホール・ディレクター)
■ラインナップ
トリコ・A『ここからは遠い国』作/岩崎正裕 演出/山口茜 初演:1996年/199Q太陽族 @アイホール 日本を震撼させた「オウム真理教事件」をモチーフに、宗教団体の信徒たちの心理に目を向け、20世紀末の日本に漂う不安感を描くとともに、家族のつながり、社会との関わり、本当のしあわせ、生きる意味といった普遍的な問いを投げかける、岩崎正裕の初期代表作。 2019年 |
コンブリ団『紙屋悦子の青春』作/松田正隆 演出/はしぐちしん 初演:1992年/時空劇場 @扇町ミュージアムスクエア 敗戦の色濃い昭和20年春。九州の片田舎を舞台に、清廉な男女の切ない恋と友情を端正に描いた松田正隆の初期名作。日常に忍び寄る死の影を茶の間の会話劇から浮かびあがらせた本作は、黒木和雄監督により映画化された。 2020年 |
会場・お問い合わせ
アイホール
〒664-0846 兵庫県伊丹市伊丹2丁目4番1号
TEL: 072-782-2000 FAX: 072-782-8880
E-Mail: info@aihall.com Twitter: @ai_hall
※9:00~22:00/火曜休館
主催/公益財団法人いたみ文化・スポーツ財団、伊丹市
企画製作/伊丹市立演劇ホール
助成/文化庁文化芸術振興費補助金(劇場・音楽堂等機能強化推進事業) |独立行政法人日本芸術文化振興会