■Nadegata Instant Partyについて | |
中崎: | Nadegata Instant Partyは、普段、現代美術の分野で作品製作・発表をしている、三人のアーティスト・ユニットです。
これまで、毎回違うスタイルで作品をつくっています。例えば、天井からぶら下がっているバナナをみんなで取るために床をつくったり、デートコースをつくったり、時として映画をつくったり、テレビ局をつくったり、ケーキ屋さんをつくったり…。「何をしてる人たちですか」と聞かれると説明しにくいところはあるんですが(笑)、その都度、ちょっとした<口実>を立ち上げることで、まわりの人たちを巻き込み、そこで起こるドラマやハプニングといった「出来事」自体を取り込んで見せていくような作品づくりをしています。 Nadegata Instant Partyでは、三人で役割分担をしています。僕は元々、美大の油絵科の出身です。普段の個人活動では、立体的なインスタレーションなど、手でつくるものをベースにつくっています。なので、三人の中では、僕がビジュアルのアナログパートを担当しています。今回のチラシのイラストも僕が描きました。あと、映画や演劇など、物語があるような内容の場合は、脚本の部分を僕が担当することが多いです。 |
山城: | 僕は映像を勉強していたので、映像パートを担当しています。時間の構成もやることがあります。 |
野田: | ふたりはそれぞれアーティストとしても活動しているんですけども、私はNadegata Instant Party以外でもアートマネジメントの仕事をしています。 Nadegata Instant Partyのプロジェクトでは毎回たくさんの人が集まってくるので、その人たちとのスケジュールの管理など、プロジェクト全体のマネジメントを担当してます。 |
山城: | これまでに行ったプロジェクトでは、2010年の春から秋にかけて三か月間、青森市に滞在して製作した≪24 OUR TELEVISION≫(※注1)というものがあります。これは、テレビでよくやっている「24時間テレビ」のパロディのようなもので、「24時間だけ放送する、わたしたち(=our)のテレビ局をつくる」というプロジェクトです。テレビ局といっても、本当にテレビで流れるわけではなくて、Ustreamなどのインターネット放送を使ったテレビ局です。番組構成から出演までほとんどのことを、公募で集まった120〜130名の人たちと一緒につくり、24時間ぶっ続けで生放送をしました。インターネット放送だったので、青森市の人たちだけでなく、日本全国や海外からも放送を見てくれて、たった一日という短い時間なんだけれども、単に美術館で作品を発表するだけでない、生の時間を実現出来て、すごく興奮しました。展示とは違った面白さや、ライブ感が生まれる作品があるんだなと実感したプロジェクトでもありました。 |
※注1…≪24 OUR TELEVISION≫青森公立大学国際芸術センター青森(2010.6) |
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■作品発表の場所について | |
野田: | 美術館以外の場所で作品を発表することも多いのですが、それは…、 |
中崎: | たまたまです(笑)。 |
野田: | 私たちは、例えば彫刻家や画家のように何かひとつのものをつくるのではなく、その場に合わせて作品をつくっていくので、場所にこだわってもいないし、かと言ってアートプロジェクトばかりに出ているわけでもありません。 |
中崎: | 場所をリサーチしたり、状況を掘り下げてみて、その中で答えを出していく創り方をしています。逆に「美術館」と一口に言っても、それは均質なものではないので、他の場所でやるのとあまり変わらない感覚で作品づくりをしています。なので、美術空間ではないところでも、その場所に合わせて丁寧に作品をつくるので、そういった(美術空間以外を発表場所とした)オファーが多いというのは事実だと思います。 今回は、アイホールディレクターの小倉さんと企画を進めています。小倉さんとは今年の2月に、KAAT(神奈川芸術劇場)というとても大きな劇場で、作品づくりを一緒にしました(※注2)。KAATは由緒正しい「ザ・劇場」という感じの場所だったので、それに対する形で「演劇のパロディ」のような作品をつくったのですが、そのとき、<劇場>というシステムに、僕ら自体が飲みこまれていくという感覚を覚えました。僕らは舞台上で、演じ手ではない素のままの自分たちでいることで違和感を出したいと思ったんですが、いざ劇場の舞台に立つと、自分たちも<役者>になってしまうような、そんな怖さがありました。それはそれで面白かったんですが、今回また<劇場>という場所で作品をつくるにあたって、なるべく「演劇をつくろう」という入口は避けたいな、と。照明や音響が整った<スペース>として捉えて、作品を考え始めたいという思いがあります。 |
山城: | アイホールに、観劇以外で来ることは初めてだったんですが、案外「閉じてる」という印象がありました。だから余計に、演劇作品をつくらないほうがいいだろうなと思ったんです。外から見たときに、やっぱりここはとても<劇場>に見えるんですよね。「ドミノやるんですよ」「はあ?」という状態をつくることで、そこを「開きたい」という気持ちがあります。 |
野田: | 私はアイホールに来て、「駅からこんなに近い劇場があるんだ」と驚きました。美術館や劇場に行くときに、駅から徒歩三分ってあんまりないですよね。時間をかけて行く、という印象が強かったんですけど、こんなにサクッといける劇場があるんだなあとビックリしました。しかも、前の広場で子どもがいっぱい遊んでいるのも面白い。でもアイホールは外観が黒いし、近付けば近付くほど、何をやっている空間かわからないというのは確かにありますね。だからこそ今回の作品は、参加無料、開催期間中は出入り自由ということにして、普段、あまり劇場に足を運ばない人にも来てもらいたいという意図があります。 |
※注2…≪エキストラ・カーテンコール≫TPAM in Yokohama(2013.2) |
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■今回の作品について | |
山城: | 「ドミノ倒し」という遊びは、10人に聞いたら9人以上が知ってるはずです。 でも、見たことはあるけどやったことはないと思うんですね。そういうところを、今回つついてみたらどうかなと、アイデアを出しました。普段、劇場に来ない人たちが、「演劇は見たことないけど、ドミノ倒しなら参加してみてもいいかも」という感じで来てくれることで、連鎖反応が起こるきっかけになればいいなと思っています。ただ、単にドミノ倒しをするだけだと、それこそテレビ局がやるイベントのようなものになってしまうので、そこは今、どうするか考えています。倒れていくドミノを楽しむだけじゃなくて、ドミノの先にパフォーマーがいて、ドミノが倒れてきたらパフォーマンスをする。パフォーマンスが終わるとまたドミノが倒れる。あるときは歌うかもしれないし、ドミノがシルエットでスクリーンに映るかもしれないし、ゆるキャラが出てくるかもしれないし(笑)、ドミノをメタファーにいろんなアイデアが生まれてくるといいんじゃないかな。まあ、折角やるからには実際のドミノも倒して、「ドミノやったな」という気持ちにもなりたい(笑)。 |
中崎: | 純粋に感動で泣きたいよね(笑)。 |
山城: | 今回はさらに、制作プロセスも開いていこうと思っていて、公開制作のような形で、四日間の<共同創作期間>というのを設けています。その期間中は、参加者が一緒にドミノを並べるかもしれないし、もしくはパフォーマーになってもらうかもしれないし…。そういうふうにして作品が出来上がっていくのも、ある意味、チャレンジな試みです。どこに向かうのかまだわからない部分がたくさん残されているので、伊丹ならではの形になっていくんじゃないでしょうか。 |
■最後に | |
野田: | どんな人が集まってくれるかによって、内容が変わってくる作品です。だからぜひ、いろんな人に来てもらいたいですね。 |
中崎: | この『チェーン・リアクション・ツアー』というタイトルも、「連鎖反応が続いて行く」という意味でつけたものですしね。 |
山城: | この伊丹のアイホールから巻き起こる連鎖反応に、ぜひご期待ください。 |
企画の詳細は、こちらをご覧下さい。 → こちら