岩崎:安部公房さんがお逝きになってから社会はいろんなことを経験してますよね。新宗教による事件もいっぱいあって。あれも疑似家族ですよね。
ウォーリー:逆に言うと新聞を広げれば、“安部公房的世界”が広がっているという感覚が僕にはあります。
岩崎:そういえば、観ている最中に『友達』が、どう現在に表出されているんだろうと思っていたんだけど、家を失った人は原発事故以降たくさん居るから、そういう疑似家族がどこかに侵入してくる問題って、3.11以降、より鮮明になっている印象を受けました。今回は稽古場でそういう作品に関しての議論はやらずに上演されたのですか?
ウォーリー:稽古の初期のころに当時のパンフとか、三島由紀夫さんの文章を読んで、『友達』はこういう風に作られてるんだよという話を役者同士でしていました。でもそのせいで動きがどんどん硬くなっちゃって…。もっと稽古場で役者と役者が言葉を交わすことで生まれることを信じようと思って、途中からはあまり考えないでと言って終わりました。
岩崎:大橋さん、初演は安部さんが青年座に依頼されて書いたと記録にありましたが。
大橋:青年座に入れ込んではった時期がありますよね。
岩崎:当時の上演はどうでした?
大橋:昔の新劇のセリフのテンポがあまりにゆっくりで。今日のなんてすごい早いですよね。安部さんはこの早さで読んでほしかったと思うんです。私も先に戯曲を読んで観に行ったら、あんまり丁寧にわかりやすく説明的に演るから、気持ち悪い。悪いけど一幕で出てきました。出たから、後は知りません。
岩崎:えー! そうなんですか?!
一同:(爆笑)
大橋:安部さんに白状したら、全然、むっとも、しませんでした(笑)。
岩崎:じゃあ今日は、お仕事とはいえ、ちゃんと見ていただいたと言うのは…見るべきものがあったというところで…。
ウォーリー:言葉のセンス、頑張ります。
岩崎:えー、大橋さんが帰り支度を始められましたので(笑)、そろそろ終わりたいと思います。当時を知らない私たちには非常に貴重なお話を聞かせていただきました。
大橋さん、本日はありがとうございました。 |