泉鏡花が自ら執筆したオリジナル戯曲の全作品上演を試みている遊劇体。
第8弾は、1913年(大正2年)に発表され、1957年(昭和32年)に久保田万太郎の演出により新橋演舞場で初演された、五幕二十四場もの超大作『戀女房』です。
劇団新派のレパートリーとして今なお上演され続けている本作は、名家に嫁いだ吉原の茶店の娘・お柳が、富や空虚な名声や地位に固執する姑や義妹との軋轢に屈せず、夫とともに家を捨てて新たな旅立ちを求めるまでの物語。「世話物」の体裁をとりながらも、終盤、この世にはびこる醜悪なものが妖怪となって跋扈し、幻想の世界へ突入していくという、いかにも鏡花らしいドラマティックな作品です。
本シリーズでは、戯曲の台詞を一切改変せずに、パフォーマーの身体性を頼りに、ドラマの本質をあぶり出す簡潔な表現で、泉鏡花の劇世界に挑みます。 |