昨年のレトロスペクティヴは、本企画の番外編として『北村想の座標/現在』と銘打ち、アイホールとも関わりの深い劇作家・北村想さんの新しい作品を取りあげた。
本年はレトロスペクティヴ本来の「回顧展」の趣旨に戻る。
これまでのレトロスペクティヴは主に、関西で活躍する若い演出家と先行世代の著述した戯曲との出会いの場として機能してきた。今回もその流れは大きくは変わらないが、登場する演出家と劇作家の年代差はぐっと縮まる。つまりは、先行世代の演劇を目の当たりにし、刺激を受け、糧とし、自らの演劇を模索してきた演劇人が、リスペクトの意を表明して先達の戯曲に挑む上演となるということだ。
桃園会と深津篤史さんは『少女仮面』を取りあげる。現代演劇の最前衛を駆ける集団と、やはり前衛として評価された唐十郎戯曲の出会いは、むしろ待ち望まれたことだった。
焚火の事務所・三枝希望さんと『幼児たちの後の祭り』の作者・秋浜悟史氏は長い間、師弟の関係であった。80年代以降、関西で演劇教育に尽力された秋浜悟史氏。その門下生を中心にした座組みである。
『血は立ったまま眠っている』の初演は劇団四季による。もちろんその上演を私は観ていないが、天井桟敷の最終公演『レミング』には間に合った世代である。寺山修司氏の対話劇としての初期戯曲に恋い焦がれ、太陽族としての上演を申し入れた。
本年のラインナップは三者三様に、強い思い入れに裏打ちされた上演となる。されど、温故知新である。懐古趣味に留まるはずはなく、現代社会を撃つ上演となることは必至だろう。

アイホールディレクター 岩崎正裕



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平成25年度 文化庁 劇場・音楽堂等活性化事業